長野県軽井沢町 House HS
軽井沢テラス
内外の壁は、樹木に馴染むように灰色の柿渋を塗った板張り。
ドア下部の窓は、奥の自然へと意識を向ける。
アプローチ側の外壁は、日常から一線を引くように横張りとし、暮らしの中心となる谷側は眼前に広がる木々に添わせた縦張りとした。
玄関ドアを開けると室内ではなく、自然と向き合う外部の吹き抜けに出る。 お客さまを迎えるウェルカムドリンクのもてなしや屋外での朝食にも使用。
傾斜に沿って降りる階段。踊り場では自然をぐるっと見渡せ、建物全体も見返せるようにした。
どの部屋も、陽のあたる自然と向き合えるように配置。谷側に立つと、手すりのないテラスにいるような浮遊感があり、山側に立つと、壁に寄り添う安心感がある。2つの体感を感じる奥行きとした。
3つのテラスは位置によって、体感が変わるようにした。ウェルカムテラス、モンーニングテラス、サンセットテラス、バステラスなど気持ちに応じて様々に使用。
自然を感じながら降りる階段。カウンターでは、夕日のあたる尾根を眺めながらのワインや風にあたりながらの読書など。
景色に近い位置は浮遊感。景色から奥まった位置は安心感。各部屋の奥行きに2つの体感をつくった。
景色に近い谷側のテラス。
通路と部屋を区切る壁がないため、各部屋を区切る展示壁を通過するたびに景色が移り変わる。
各部屋の間仕切壁を通過するたびに景色が移り変わる(中央の黒い部分は、黒くつぶれているが実際にある間仕切壁の側面)。窓の縦横比や天井高は各部屋ごとに異なる。
部屋の中で一番小さい窓を持つバスルーム。窓比は縦長。バスタブに沈み込むと空を広く感じるように。
通路よりベットルームを見る。 通路を歩きながら、部屋の間仕切壁(展示壁)を通り過ぎると、次の部屋越しに、意識が景色へと向く。
展示壁は構造壁になっている。飾る作品の大きさや気分に応じて位置を選べるように壁の素材は木板とした。
室内でも外部でも、気分に応じて気軽に食事ができる配置。
植物が自生する大地をなるべく残し、傾斜地に降る雨を受け流す基礎形状にした。
1、2階は外部空間を挟んでつながる。各テラスは、見る方向や床の高さ、奥行き、天井高を変え、異なる体験をつくった。
体感としての自然
アートコレクターの建主は、自然と向き合う場所を、陽の当たる景色が望める 北向きの傾斜地に求めた。
この別荘は、各部屋ごとに、それぞれの景色をつくり、移動と共に景色が移り変わるようにした。
1、2階をつなぐ唯一の階段がある部屋を外部にし、暮らしの中で、この外部を必ず通る計画にした。
建物の構成は、部屋を数珠状に繋げ、立体的に折り曲げた2階建てとした。
各部屋は アートを飾る展示壁で区切り、部屋をつなぐ通路は 北の景色から離れた南側に設け、通路と部屋の間には 壁を設けなかった。
そのようにして、部屋を区切る展示壁を通過するたびに、次の部屋越しに、意識が景色に向くようにした。
各部屋の窓は、同じ方向を向いているが、窓の縦横比やカタチを変え、すべての部屋がメインの部屋となるように異なる体感をつくった。
また、各部屋の奥行きは、傾斜地の谷側にいると浮遊感、山側にいると安心感、という2つの体感を意識できる 最小の奥行きにした。
人は、景色や環境に慣れてしまうが、動線の中心に外部を挟むことで、予想外の情報に出会い、感覚が呼び起こされる。
雨の前には、しっとりした湿気を肌で感じ、小鳥たちのザワツキは耳で感じる。内外の明暗差は目で感じ、空気の濃度は鼻で感じる。
その時々で、感じることは変わる。
ここには、室内で感じられる良さも、外部だから感じられる良さもある。
その体感を暮らしの中で繰り返えしていくことで、眺めているだけでは得られない自然を感じることができる。
変化し続けている自然を顕在化させ、 「体感的対比がつくる自然」と向き合う場所を目指した。
その人その人が、その時々で、つないでいく自身の自然と向き合えるように。
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町
用途:別荘